検品システムの生産性改革
—「失敗したら戻せば良い」攻めの変化ができるわけ—
インタビュー対象者(※業務内容・所属部署は取材当時のものです。)
・流通事業部 窪田 一夫
・流通事業部 窪田 一夫
・流通事業部 大阪PDセンター 田中 智顕
大阪市港区にある大阪PDセンターは、約2,800坪。ホームセンターや家電量販店チェーンストア等で取り扱う小物や部品等を中心に、3PLを手掛ける。開設以来、5S活動をベースに改善活動を行い、顕在化していない顧客ニーズを炙り出すことで期待を超える成果を上げてきた。この記事では、独自の検品システムを開発し生産性を上げた、当センターのカルチャーを深掘りする。
顕在化していない課題を見つけ、改善する
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顧客の要望外の問題提起をし、改善提案を行うことで成果を上げています。どのように問題点を発見したのでしょうか?
窪田
当センターは、BtoB向けの雑貨を扱い全国展開するチェーンストアの物流業務を請け負い、センター内の顧客の在庫より、出荷先のオーダーに基づき商品のピッキング・検品を行い出荷しています。センター立上げ当初のお客様からの要望は、「ミスなく出荷すること」「納期に間に合うこと」の2点のみ。そのため、立上げ期は、業務の引継ぎ元となるお客様の自社センターのやり方を踏襲して、検品・出荷業務を行っていました。 -
田中
当センターでは、週1回ペースで改善活動の推進会議を実施していますが、立上げ当時の推進会議で浮かび上がってきた課題に、「工数の偏り」がありました。調べると、一連の業務の内、検品・梱包業務の工数が全体の69%を占めており、非常に偏っていることがわかりました。また、ピッキング業務と検品業務のスピードに差があったことから、検品エリアに商品が常時滞留してしまい、スペース効率も低下するなど、様々な問題が明らかになりました。検品業務の生産性向上が、センター全体の生産性向上の鍵になっていることが見えてきたのです。 -
窪田
メーカー物流と異なり、当センターのような消費系物流は動きが読みづらいんですね。その上、午前中に注文データが届いて、即日出荷しなければなりません。通常時より多い注文が来てもそのルールは変わらないのですが、従来通りのやり方だとスピードが追いつかず、他の業務を後回しにせざるを得ないこともしばしばありました。 -
改善案はどのように生まれたのか教えてください。
田中
既製品のハンディターミナルやレジ型の物流システム機器もありますが、効率化によって得られる便益に対して導入コストがかかりすぎるので投資が難しい状況でした。そんな日々が続いたある日、窪田がおもむろにホワイトボードに絵を描き始めたんです。「自分達でこんなん作れへんかな?」って。それが、現在当センターで使っている検品システムの元になりました。 -
窪田
「こんなんできたらいいよね」というアイデアから始まり、「既製品に我々の理想とするものがないなら、自分たちで一から作ってみよう」という感じで、物流システム機器開発に着手しました。全員にとって初めての試みだったので、「スーパーのレジにある光るスキャナーがいるんじゃない?」「既存のタッチパネル式のPCをカスタマイズしよう」など、一つずつ課題をクリアしていって。最終的に、無線式レジ型検品梱包ラインを4ライン導入しました。導入コストは数百万円程かかりましたが、それでも既製品の半値ほどで、我々の要望をすべて満たす機器を導入することができました。
「ニーズに合わせて形を変える」ヒガシ21の仕事
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新システムを導入した成果について教えてください。
窪田
改善前と比較して、 141%(年間平均)出荷生産性が向上しました。また、レジ型検品システムの導入により検品待ちの商品が滞留するといった問題も解消されました。滞留した商品を仮置きするムダな倉庫スペースを削減できた事で、物量波動に対する対応力が向上しました。1日に処理できる物量が増えたことで、受注量も伸びています。お客様からも、「自社だけだったら、一生こんなシステムはできなかった」「ヒガシさんにお願いしたから実現した」と嬉しいお言葉を頂戴しています。 -
田中
お客様の目に見えていることだけが課題ではありません。お客様自身も気付いていなかった潜在ニーズを見つけ、ご提案したからこそ、成果を出すことができたと考えています。 -
窪田
これまでのやり方にこだわらず、自らを変化させることでお客様に貢献しようという姿勢から生まれた今回の取組は、まさに、ヒガシ21の提供価値をあらわす際によく使われる「アメロジ(Ameba×Amazing=AMEBING Logistics)」を体現した仕事だったかもしれません。要望に応えるという受け身な姿勢にとどまらず、こちらから新たな提案をしたからこそ、お客様からも高評価をいただけたのでしょう。この一連の取組は、2015年に日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の、「物流合理化努力賞」を受賞しました。
顧客ニーズを満たすボトムアップの改善活動
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「失敗したら戻せば良い」攻めの姿勢は、どのように受け継がれてきたのでしょうか。
窪田
75年以上続いている企業だけあって、「できない挑戦」はしない社風だと思いますよ。ただし、「できない」と最初から諦めるのではなく、「どうすればできるのか」を常に考えて高い目標に果敢にチャレンジする姿勢を備えた企業だと自負しています。特に、現場では日々改善活動を繰り返し、お客様への新たな提案を模索していますから、この姿勢はよく根付いています。過去、現場が試行錯誤して作り上げたサービスが新規事業として独立したり、お客様から信頼を得て、長年の取引につながっていることからも、ヒガシ21のDNAとしてこの姿勢が受け継がれていることがよく分かります。誰でももちろん失敗はしたくありません。だから現場では、リカバリーできる体制を常に頭の中で描きながら、業務に当たっています。大きいプロジェクトほど慎重になりますが、慎重になりすぎても物事は進まないですから。部下には、「失敗してダメだったら元に戻したらええやん」って口酸っぱく言うことで、チャレンジを推奨しています。 -
田中
社員だけではなくパートさんからも、「こうして欲しい」「こっちの方がいいんじゃない?」と改善案はどんどん出てきます。管理職や経営層がボトムアップで意見を吸い上げて、柔軟に実装していく。失敗したら元に戻す。その積み重ねで、ヒガシ21の「まずはやってみる姿勢」が育まれているのだと考えています。今後も、従業員の創意工夫をいかした改善活動に取り組み、顧客ニーズに応え、競争力の向上に取り組んでいきたいです。
顧客も気づいていない課題やニーズを顕在化し、レジ検品をはじめ様々な物流システム機器を活用しながら業務効率化に取り組んできた背景には、ヒガシ21が長年培ってきた「失敗を恐れずまずはやってみる姿勢」が根付いている。
ヒガシ21は、これからも創意工夫を重ね、「小さな改善の積み重ねで大きな効果」を出しながら顧客のために価値を創造し続けていく。